PFASとがんの関連性について

**PFAS(パーフルオロアルキル化合物)**は、フライパンのテフロン加工、防水加工製品、食品包装など、日常的に使用される多くの製品に含まれる化学物質の一群です。これらは「永遠の化学物質」とも呼ばれ、自然環境や人体内で分解されにくい性質を持ち、健康への影響が懸念されています。最近では、特にがんとの関連性が注目されています。本記事では、PFASとがんの関連性について、科学的な視点から解説します。


PFASとは?

PFASは、炭素-フッ素結合という非常に強い化学結合を持つ合成化合物の総称です。この結合のため、PFASは耐熱性や撥水性、撥油性に優れており、さまざまな用途に利用されてきました。しかし、これらの性質が原因で環境や人体内に蓄積しやすくなり、健康リスクが懸念されています。


PFASの健康影響に関する研究

PFASの人体への影響を調査した多くの研究では、以下のようなリスクが指摘されています。

  1. 内分泌系のかく乱
    PFASはホルモンに似た働きをし、甲状腺機能や生殖機能に影響を与える可能性があります。
  2. 肝機能への影響
    PFASは肝臓に蓄積しやすく、肝酵素の異常や脂肪肝などの症状を引き起こす可能性があります。
  3. 免疫系の抑制
    PFASは免疫応答を低下させ、感染症への抵抗力を弱めることがあります。

PFASとがんの関連性

いくつかの疫学研究と動物実験から、PFASの曝露が特定の種類のがんのリスクを増加させる可能性が示されています。主に以下の点が明らかになっています。

1. 腎臓がん

アメリカの大規模研究では、PFAS濃度が高い地域に住む人々の間で腎臓がんの発症率が増加していることが報告されています。

2. 精巣がん

精巣がんもPFASの曝露と関連があることが指摘されています。特に、飲料水を通じたPFASの長期的な摂取がリスク因子として挙げられます。

3. 肝がん

動物実験では、PFASが肝細胞のDNA損傷を引き起こし、発がん性を持つ可能性が示唆されています。

4. 甲状腺がん

甲状腺への影響が指摘されているPFASですが、甲状腺がんとの明確な関連性を調査する研究が増えています。


メカニズム

PFASががんを引き起こす可能性のあるメカニズムとして、以下が考えられています。

  1. DNA損傷
    PFASは細胞内で酸化ストレスを引き起こし、DNAに損傷を与えることでがんの発症リスクを高める可能性があります。
  2. 免疫抑制
    免疫系を抑制することで、がん細胞の増殖を防ぐ能力が低下します。
  3. 内分泌系への影響
    ホルモンの調節機能を妨げ、ホルモン依存性のがんのリスクを増加させる可能性があります。

規制と対策

近年、PFASの健康リスクを軽減するための規制が各国で進められています。

  • アメリカ:EPA(環境保護庁)は、飲料水中のPFAS濃度の厳しい基準を設定しました。
  • EU:いくつかのPFAS化合物の製造・使用が禁止されています。
  • 日本:環境省がPFASの汚染状況を調査しており、規制強化の検討が進んでいます。

また、個人でできる対策として以下が推奨されます。

  • 浄水器を使用して飲料水中のPFASを除去する。
  • 不要な撥水・撥油加工製品の使用を控える。
  • 環境に配慮した製品を選ぶ。

まとめ

PFASはその便利さゆえに広く普及しましたが、その影響で健康や環境に深刻なリスクをもたらしています。がんとの関連性は確立されつつあり、特に腎臓がんや精巣がんのリスク増加が懸念されています。今後さらに研究を進めるとともに、規制の強化や日常生活での予防策を講じることが重要です。

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